【消費税とベーシックインカム】 賛成派と反対派とでの見え方の違い

今回は、相互理解のために、消費税とBI(ベーシックインカム)について賛成反対それぞれの立場での見え方の違いについて書きます。

 

【格差是正や再分配】という観点からの見え方の違いであり、
特にBIについてどちらか一方を擁護する意図の内容ではないことをご承知おきください。
私見を入れずに言葉少なめに説明するような配慮に努めます。
相互理解のための参考資料となることを願っております。

  • 出来る限り誤解を避ける説明上、注記は多いですm(_ _)m

 

  • (注1)BIは、Universal basic income、basic income、 UBIとも表記され、『全国民に対しての恒久的一律給付』を本来意味しますが、特にBI賛成派内での解釈は諸説あります。本記事では、BI=『全国民に対しての恒久的一律給付』として説明します。

 

まず大前提として、『お金というものは集まる性質』をもっています。

お金は貧しいひとの手元を離れ、お金持ちのもとに集まる性質を持っています。

  1. ぱっと思いつくのは、『利子(・配当金)』だと思いますが、利子だけではありません。
  2. 余分なお金を投資に活用することにより、更なるお金を集める仕組みを作ること

詳しくは 政策議論のために頭に入れておきたい!! お金の根源的な性質

  • この大前提でのイメージ図の縦軸、横軸はざっくりとしたイメージでとらえて大丈夫です。

 

お金というものは、ほっておけば、お金持ちの方にどんどん集まり、格差は拡大する方向に進みます。

 

そこで税制や政府支出等の『公共の政策』でお金を持たないものに戻していく必要がある訳です。

 

税制でお金を戻す観点から見ていきましょう!

 

税制でお金を戻す場合は、お金持ちからより多くの税金をとることとなります。

 

  • (注2) 『税は財源ではない』という考え方では、税制でお金を戻すという考えはおかしいとの指摘がありますが、税制により財政スペースを広げるというMMT的な考えによっても同様の政策が導かれます。例として分かりやすいのはこちら 「税制でお金を戻す」の表現としては要検討課題です。

 

 

逆に格差が拡大する税制は以下のとおり、持たざるものから多くの税金をとるパターンです。

 

実際には、上記のイメージ図に補足した通りお金持ちよりも多くの金額を、持たざるものよりとることは不可能です。

従って、金額ベースで考える場合、「税制で格差拡大することはあり得ない』、となります。

ここが増税賛成派の見え方の第一歩となります。

 

 

 

さて、金額ベースで考えたとき、お金持ちも持たざるひとも全てのひとが平等に同じ金額を納める税金が過去にはありました。

 

人頭税です。

人頭税

古代から封建制にかけての時代には多くの国で導入されていたが、所得に対して逆進性の強い税制であるため、現在では導入している国はほとんどない。

所得が無くてもそこに住んでいるだけで課税されるため、困窮した庶民が逃亡したりすることもあった。逆にこれを利用して、特定の民族を排斥する意図で導入されることもあり、19世紀後半のカナダでは増加した中国系の排斥を目的に人頭税を課した事例がある[2]。

 

税の逆進性(ぎゃくしんせい)を考えるとき、金額ベースではなく、【富に占める税の割合】ベースで考えます。

富(持っている資産や得られる収入)に対し、どの位の割合が課税されるかです。

 

  • (注4)税と比較対象の富として、通常は得られる収入を目安にすることがあるのですが、収入は少なくても大きな資産を持ったお金持ちも存在しますので、この記事では収入も資産も税との比較対象とするために、【“富”に占める税の割合】としています。

 

人頭税の場合、
例えば1000万円持っていても、100万円しか持っていなくても一律90万円とられるという事態となり、
富に占める税の割合ベースで考えると、人頭税の酷さが可視化できることとなります。

 

 

 

次に、消費税を見てみましょう!

 

消費税では、モノやサービスを購入した分、税金がかかることになりますので、沢山お買い物のできるお金持ちの方が多くの金額を払っていることになります。

 

 

つまり、金額ベースで考えた場合、お金持ちがより多くの金額を負担する、あるべき税制となります。

消費税賛成派の大部分には、このように見えています。

 

 

一方で、【富に占める税の割合ベース】で考えた場合、見方は全くの正反対となります。

というのは、お金持ちはお金を使わずに、貯蓄や金融投資により多くの金額を回すことができるからです。

貯蓄や金融投資により多くの金額を回すことができれば、消費税の支払いを節約することができます。

お金に余裕がない人ほど、生活に手一杯で貯蓄や金融投資に回すお金はなくなります。

 

  • 例えば、消費税20%でそれ以外の税金がかからない場合
  • 100万円の収入で暮らしているひとの税負担額は(生活のために全額モノ・サービスを購入し消費税を支払うので←例)20万円で 残りは80万円 →富(収入)に占める税の割合:20%
  • 1億円の収入が得られるひとの税負担額は(2000万円で生活=モノ・サービスを購入、残りは貯金や金融投資をするので←例)400万円となり、残りは9600万円→富(収入)に占める税の割合:4%

 

富に占める割合ベースで考えた場合、消費税も経済的に立場の弱いものに冷たい税金となり、格差拡大を促進します。(消費税反対派の見方となります)

 

 

次に政府支出でお金を戻す観点の話です。

 

 

そもそもの話として、BI賛成派の中には、「お金を戻す」のは税制で何とかすればいいという意見があります。

一方で、BI反対派では、格差是正をするには税制だけで不十分との考えがあります。

 

 

政府支出の仕方で最も酷いのが 金持ちに多くお金が行き渡るようにすることです。

これは、発展途上国かつ独裁国家では見られる構図です。海外から支援金が入ったとしても、独裁者に流れ、大多数の国民にほとんど行き渡らず、国が発展しません。

格差が拡大するだけでなく、治安も悪くなり国土は荒廃します。

 

 

そして、いよいよBIの話題です。

金額ベースで考えると、『全国民に対しての恒久的一律給付』のBIは、金額が平等な政府支出となります。

 

「金額を同じにせず、もっと積極的に政府支出をコントロールして持たざるものにお金が行き渡るようにすべき」、がBI反対派の意見となります。

 

 

一方で、【富に占める政府支出の割合ベース】で見た場合、同じ金額でも持たざるものの方がより大きな恩恵を受けることになります。

  • 例えば、100万円の年収のひとに毎月10万円のBIだと、年収が2倍になるのに対し、年収1億円のお金持ちはBIでも約1%年収が増えるだけで大きな影響はありません。

 

従って、【富に占める政府支出の割合ベース】で考えると、
確かにBIは経済的弱者に恩恵のある政府支出の仕方となります。

これがBI賛成派の見方です。

 

 

まとめます。

消費税でもBIでも賛成派と反対派で見方が違うのが興味深く、だからこそ議論を複雑化しているものと推察します。

まず大前提のイメージ図・・・「お金は本来集まる」ものだから、『公共の政策でお金を戻す』ということから始めて、建設的な議論に発展して頂けたらいいな、と思います。

本記事が、相互理解に少しでも役立つことを願っています。

 

  • (注7)本記事は、【格差是正や再分配】の観点からの説明です。
    しかし、それ以外にも論点は存在します。
    例えば
    BI賛成派は 一律の給付で分かりやすいこと、人としての(モノ・サービスを選ぶ自由も含んだ)尊厳を守ること
    BI反対派は お金があるからといって それぞれ希望のモノ・サービスが得られるかは別問題であること、他の経済的弱者を護る政策を優先すべきであること
    …等の論点が存在します。他にも外部要因も含んだ指摘も存在します。

 

 

消費税で言う『逆進性』とは、結局、何なのか?

【相互理解のために】始まりから考えるベーシックインカム

https://zaigen-lab.info/2023/02/15/delinquent_explanation_manga10/

 

 

©シン

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