04.将来にツケを残さないためには?

前の話題:03.財政破綻はどのように起こるのか?

 

 

前の章で説明した通り、本当の財源である供給能力の破壊を止められなければ、将来的には財政破綻・通貨暴落・ハイパーインフレも起こりえます。

チラシ説明の最後として、将来にツケを残さないためにはどういった「未来へ種をまく」政策がいいのか?その指針を説明します。

 

(1)低迷期は需要を押し上げる政策をとる

需要が低迷している低迷期は

本当の財源である供給能力は使わないと減っていくので、供給能力を余らせず活用していくことが重要となってきます。

家計も企業も借金してまで支出する余裕がない状態では、最後の買い手である政府が政府支出でお金を創り(money creation)、供給能力維持の後押しをする必要があります。

 

需要の穴埋めのためにどこまで政府支出が可能/必要なのかは諸説あります。

通常よく言われている”平均概念での”潜在GDPでの算出は過去のGDP平均値からの推定であり、明確に誤りです。
潜在成長率の秘密 信じがたい「平均概念」の欺瞞と恐怖を知ってくれ [三橋TV第283回] 三橋貴明・高家望愛

 

2年間で600兆円近く追加で政府支出して、ようやくデフレ脱却目標のインフレ率2%を超えるという参議院・調査情報担当室の調査結果も出ています。本当の財源である供給能力を今後とも維持したかったら、2年間で600兆円近くの政府支出を実施する“必要がある”ということを言っています。

年200兆円以上の政府支出を「必要」とする根拠 *複数あり

 

この驚くべき調査結果は国内の人々・企業の潜在的な力も示していますし、お金が稼げると分かったら自発的に供給能力に投資し、インフレ率は予想以上に高まらないということも示していると考えます。

 

また、どの位、政府支出が可能/必要なのかに頭を悩ませるより、本当の財源である供給能力の維持・確保を最優先に考え、必要なところに政府支出を行っていけばいいという考え方もあります。要するに、「私たちの暮らしを第一に」考えていけばいい、ということです。

 

  • この時期に大切なことは日本国内に漂う将来不安を吹き飛ばせる位の大規模の政府支出です。将来不安の払しょくは企業の内部留保含む民間貯蓄の取り崩し→需要増→供給能力の破壊食い止めに繋がります。
    以下に特に効果的な政策例を挙げますが、この限りではなく道徳観念をも考慮せずに極論を書くと、国外向けや破壊行為除くどういったことへの支出でも多かれ少なかれ効果はあります。支出政策誤り部分的にバブル起これば、部分的に適切に税金をかければ事後でも鎮火させることは技術的には可能です。各党・各団体で議論深めて頂ければと考えます。本当の財源を理解した上での各党の個性ある公約策定を希望します。
    有権者の皆様におかれましては、国の本当の財源は、過去の先人達そして今の私達の築き上げた供給能力であること、つまり国家予算は私達の共有財産であると認識の上、どの党・団体に政治を任すのか決めれば宜しいかと考えます。

 

①需要落とす消費税はまず廃止の方向へ

消費税は需要の6割を占める消費にかかる“罰金”であり、需要押し上げをするには消費税はなくす方向で考えていくことが必要となります。

消費税廃止のための政府支出はたったの30兆円程度であり、全く問題ない上に本当の財源維持のため使わなくてはならない支出額となります。

 

②生活に余裕のない世帯への直接支援

子育て世帯のような生活に余裕のない世帯は、万一のための貯蓄をすることもほとんど出来ない状態にあります。

生活に余裕のない世帯を救うことは弱者救済という面だけでなく、重要な需要引き上げ効果があります。

政府支出をし民間にお金を流しても消費せずにすぐに貯金されたら、需要引き上げは薄れます。一方で、元から生活に余裕のない世帯への直接支援策は消費行動へと向かいやすく、周りのひと・企業も恩恵を受けることが出来、需要引き上げが期待出来ます。

 

③社会保障を充実させ安心感の持てる社会に

将来不安の大部分の源は“自分や家族が経済的に貧しくなればもう助からない・・”ということから来ています。政府も2019年には年金2000万円問題を取り上げ、貯蓄(金融投資)を推進しています。

「国の借金」の存在を声高に叫んでおきながら、民間貯蓄増による「国の借金」増を肯定する矛盾した構図となっています。

このような物事をよく把握出来ないでその場しのぎで対処するやり方では何も解決はしません。

貯蓄を減らし消費にお金を回して欲しかったら、国内にまん延する将来不安を取り除いてあげることが肝心となります。

将来不安を解消するには自己責任で全て完結するのではなく、精一杯頑張った後は国が面倒を見る、セーフティネット、社会保障の充実が必要となってきます。

更に社会保障の充実は関連する医療・介護・福祉事業の供給能力の底上げにも繋がります。

 

 

 

(2) モノ・サービスが不足の場合は、供給能力に投資

需要が旺盛となった後 もしくは 供給能力が破壊された後にくるモノ・サービス不足期は

供給能力を引き上げていく必要が出てきます。

 

  • 不足期に政府支出していく場合は低迷期とは異なり、どこに支出するかが重要になってきます。政治的な癒着のために判断を見誤り失政を続けていけば、他国と同様に財政破綻・通貨暴落・ハイパーインフレにも繋がっていきます。モノ・サービス不足になればなるほど本来の政治の腕の見せ所となります。低迷期以上に、私欲に走る政治家及び官僚は有害な存在となります。
    供給能力維持の観点からも利権や中抜きは出来る限り排除する必要が出てきます。また実際に政府支出するのではなく、民間の投資を適切に誘導するための法律等を作っていく必要もあります。

 

①国際的な価格競争力が弱いが供給能力として重要な産業優先で

ひとが暮らしていくには不可欠な産業に関わる供給能力の確保を優先します。

例を挙げると、食料、医療、電気水道ガスのようなライフラインです。

生きていくのに不可欠な供給能力はどのような状況になっても安定した需要があり、需要に対応する供給能力を必要とするためです。

そのような供給能力を輸出頼みにすることは将来的な貿易赤字、更に発展して財政破綻、通貨暴落、ハイパーインフレとなる可能性を高くします。

過去多くの国々が国際的な供給能力を早期につけるのに「選択と集中」をし、原油、観光、プランテーション農業といった単一産業に特化した供給体制を選択し失敗してきました。

国として出来るだけ国内で自給自足出来る体制を整える、その後に供給能力の余剰分を他国に輸出するのが正しい在り方であり、供給能力引き上げの際優先して取り組む必要があります。

 

②将来への安心感と競争心の適度なバランスとなるように

需要低迷する低迷期に足りないものが「将来への安心感」ですが、需要旺盛となる不足期に足りなくなるのが「競争心」です。

頑張っても頑張らなくても変わらないのであれば、頑張らなくなる方に進むのが大部分のひとの常であり、それは国内の停滞、供給能力にも悪影響を及ぼしていきます。供給能力への悪影響が進むと、特に1970年代の英国で見られた年平均10%以上の高インフレ状態にも陥ります。

頑張らなくても健康で文化的な生活を保障した上で、頑張るひとにはもっといい生活が出来るように制度設計をする、、、(更に言うと持てるものが持たざるものを奴隷のような状態にしないようにもする絶妙のバランスが求められます)

このような将来への安心感と競争心のバランスをとる取り組みは近現代史において、古典的自由主義→共産主義(西側陣営はケインズ学派)→新自由主義(今)と両極に行き過ぎた状態を取りつつ模索が続けられています。今は困難に見える道ですが、過去の失敗から自己管理の仕方を学び、技術の進歩によりこれまで技術的に出来なかったことが出来るようにし、次の時代は更に心地よいバランスとなるよう目指していけたらと思います。

  • *供給能力が破壊された後のモノ・サービス不足期では、「将来への安心感」も持てない状況で、悪い方向に「競争心」が刺激され悲劇的な結末となる恐れもあります。

 

③自然原料を持続的に得られるよう環境問題にも気を配る

これまでの供給能力引き上げには、自然環境というものは軽視されてきました。しかし、今後は自然環境というものは、大切な供給能力の一つである自然原料を産み出すかけがえのないものという経済的な観点も持つ必要があります。

今後の供給能力引き上げにおいては、持続的に自然原料を得られるように、自然保護の分野にも技術開発を進めていき地球との調和を図る必要があります。

 

(3) 一部にお金が集まりバブルになるのを 税金によって防止

最後に、以上の政策で政府支出をしていく際、一部だけお金が儲かりやすい産業が必ず出てきます。

不足期には欠如しがちとなる「競争心」をなくさない程度の所得税等の累進性の強化は基本となります。

更に、儲かり過ぎの産業は投機化し、実体のある供給能力とは関係のない世界でお金のやり取りがなされます。投機は最終的には崩壊し実際の世界の需要の落ち込みという形で多大なる悪影響を及ぼしますので、投機化しないうちに罰金(税金)付きの規制をかけ早期に芽を摘んでおく必要があります。

需要過多になる不足期には、例えば消費税のような直接需要を落とす税制も有効ではあります。しかし、需要を落とす際に一番犠牲になるのは生活の余裕なく全て消費に回さざるを得ない子育て世帯、低収入世帯であり、人道上の観点から出来るだけ避けておきたい政策です。

例えばAIのような技術の進歩での供給体制の一層の強化や現代貨幣理論(MMT)のような学問の周知によって不足期に需要を落とす税制を今後は使わずに出来るのであれば、なおよしと考えます。

 

まとめ

低迷期は需要を押し上げる政策をとる

モノ・サービス不足になってきたら、供給能力に投資

一部にお金が集まりバブルになるのを 税金によって防止

 


補足記事

私たちの理想を制限する2種類の重し:今、何故動きにくくなっているのか?

 

財源チラシの補足説明は以上です。お読み頂きありがとうございました。

財源チラシ説明での引用元の紹介

 

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【国の、本当の】財源チラシ説明

 

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