本当の意味で「国の借金」と呼ばれるものは、2つあると考えています。
自国通貨建ての国債のことではありません。
- 詳しくは⇒ ヤンキーが国債を解説してくれる漫画
外貨建ての国債、そして対外純負債です。
- 対外純負債:自国の国民・企業・政府が海外に負う負債の合計額を海外に対して持つ資産の合計額で引いた差額。資産の方が多ければ対外純資産となる。
外貨建ての国債が政府が負い、間接的に全国民が負うものですが、対外純負債は直接的に全国民が負う「国の借金」となります。
対外純負債は、毎年の経常収支の赤字の積み重ねにより膨れ上がり、簡単には逃れられないものとなっていきます。他国を支配するのに、戦いは要りません。適度な武力(脅し)に加え、他国に貸しを与え続ければいい訳です。
一方、日本の経常収支は20年以上、ずっとプラスで推移しています。
毎年の経常収支黒字のために、対外純負債は減り続ける・・・というより対外純資産が年々、過去最高値を更新し続けています。
- (脅かしてゴメンナサイ笑)
今回、日本はそこまで差し迫った状況ではないのですが…
「このままでは危うい状況なのです。」ということをお伝えしたく記事化をしました。
- 経常赤字が続き、対外純負債を膨らまし続けているアメリカはどうなんだ?という議論もありますが…アメリカは覇権国であり、覇権国がとるべき責任を果たした結果の経常収支赤字でもあり、同時に挑戦国に付け入る隙を与える経常収支赤字でもあり…本記事で説明するのには大きすぎるテーマですので、『覇権国であるアメリカは例外』と考えて、本記事を読んでいただけたら幸いです。
さて、日本は20年以上、経常収支(海外からの損益)は黒字で、順調に世界最大のお金持ち国家(対外純資産32年連続世界一)の座を築き上げています。 *2022年末時点
じゃあ、問題ないじゃないか?と思われるかもしれません。
でも、その海外からの稼ぎ方には問題があります。
モノ・サービスを通した実体取引に伴う収支は減少傾向にあります。
2008年以降は赤字となる年も増えていっております。
貿易・サービス収支 貿易収支及びサービス収支の合計。実体取引に伴う収支状況を示す。
- 貿易収支 財貨(物)の輸出入の収支を示す。
-略-- サービス収支 サービス取引の収支を示す。
(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/term.htmより抜粋/2023年6月10日参照)
一方で、経常収支の黒字を下支えしているのが、第一次所得収支です。
第一次所得収支 対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。
(第一次所得収支の主な項目)
直接投資収益:親会社と子会社との間の配当金・利子等の受取・支払
証券投資収益:株式配当金及び債券利子の受取・支払
その他投資収益:貸付・借入、預金等に係る利子の受取・支払
(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/term.htmより/2023年6月10日参照)
1996年を起点にした場合の、対外純資産と第一次所得収支の増加率はほぼ連動した形となっており…
対外純資産 増加 ⇒第一次所得収支 増 ⇒対外純資産 増 ⇒第一次所得収支 増 ⇒・・という、
いわゆるお金持ちがどんどん富を蓄えていく構造となっています。
「モノづくり日本」から「金貸しの国 日本」への変容です。
おカネを稼げれば、どんな手段でもいい・・・と思われる方も中にはいらっしゃるかもしれません
ですが、問題は2点あります。
「金貸しの国 日本」への変容が危うい理由①
実際に私たちが暮らしていけるのは、おカネではなく、モノ・サービスがあるから、です。
現代ではおカネがあるから、モノ・サービスが買える機会に恵まれているために、おカネが稼げればOKと錯覚をしてしまう方も多いとは思います。
しかし、おカネが使えるのは、ルールや相互の信頼関係のもとに成り立っています。
ルールや信頼関係が壊れれば、いくらおカネを払ってもモノ・サービスは得られません。
国際関係はなおさらです。
日本が他国のルールや国民感情、政治体制を直接コントロールできる訳ではありません。
- 詳しくは ⇒ 20分で判る!円とドルの仕組み【東大生の経済入門② 信用貨幣論(MMT現代貨幣理論)為替編】金持ち島の話(Youtube動画) https://youtu.be/ejIdzhicrGU?t=783
日本が「モノづくり日本」から「金貸しの国 日本」になれば、お金持ち国家としてモノ・サービスを得るために他国の顔色を窺わざるを得なくなります。
「金貸しの国 日本」への変容が危うい理由②
お金持ち国家としてモノ・サービスを得るために他国の顔色を窺わざるを得なくなれば、
海外からの要望に応えざるをえなくなります。
例えば・・
米国で欠陥が疑われる武器や遺伝子組み換え作物、農薬等 ゴミの、日本への買い取り圧力 ⇒輸入のかさ上げ
そして
海外への無償援助です。
- 第二次所得収支 居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す。官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払等を計上する。
(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/term.htmより/2023年6月10日参照)
日本が長期で停滞し、GDP/1人当たりのGDPで他国に追い抜かれ、少子化も進みつつある中で、
他国への支援は増えております!!
全体として、お金持ち国家であるが故に、です。
少なくとも「モノづくり日本」であれば問題ありませんでした。海外から輸入や海外に援助したとしても、いざという時は、国内にしっかりとしたモノ・サービスを作る力(供給能力)がありますので・・
しかし
「金貸しの国 日本」は危ういです。中身が空っぽになりつつある中で、他国のモノ・サービスを買い取り、他国を援助しています。
他国に見放されたり・・・他国の外交姿勢が変わったら・・・空っぽの国は終わりです。
今すぐに・・・日本は過去の栄光を食いつぶす姿勢を改める必要があると思いますが、
あなたはどう考えますか?
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