中央銀行は金利調節のために国債の引き受けを行っています

日本銀行をはじめとする各国の中央銀行は、金利調節をして、景気をコントロールしようとしています。

金利調節に使われるのが、(自国通貨建ての)国債です。

この記事では、「中央銀行は金利調節のために国債の引き受けを行っています」を解説します。

 

1. 民間銀行は国債を保有したい

自国通貨建ての国債は、自国で作られる通貨(日本の場合は日本円)をもとにしているため、財政破綻は起こらず、極めて安定な金融資産として機能します。

国債発行に否定的な考えの執筆陣で書かれた「国債の全て」(三菱東京UFJ銀行円貨資金証券部著)には、民間銀行の立場から次のように記載されています。

銀行は、-中略-総合的な資産・負債管理のもとで、金利リスクや流動性リスクのコントロール手段として国債投資を行っている。

-中略-

多くの銀行では、預超部分に対応する資金運用の大半を国債に投資しているのが実情である。その理由は、国債が信用度・流動性ともに高く、預超部分の見合い運用として適していること-以下略

国債の全て 第6章 銀行ALMにおける国債投資とリスク管理 2 銀行におけるALM運営体制 p355

“国債は信用されているから民間銀行で多く所有されている”と、国債発行を否定的に記載したい思惑の入っている「国債の全て」でも認めざるをえない状況です。

私たち家計・企業の銀行預金は民間銀行側からみると借金であり、課された借金以上の利益をあげる必要性が生じます。

課された借金以上の利益をあげる必要性がある中で、貸し倒れリスクの高い住宅ローンや株にて運営し、利益を狙うことは危険なギャンブルと同じです。

ギャンブルは数回だけなら成功するかもしれませんが、ギャンブルをもとに銀行を継続的に運営することは不可能です。

利回りが低いが破綻の心配がなく堅実に利益を上げられる国債を主力にした方が、安定した銀行サービスを提供していくことが可能となります。

 

2. 国債の金利が他の債権の金利の基準に

民間銀行は国債金利を基準(最低金利)として、貸し倒れリスクの高い他の債権の金利を上乗せして考えていきます。

例えば、(インフレ率の予想 0~0.5%)、国債の金利が1%だったら、ドコモ社の社債は2%、住宅ローンの金利は4%という風にです。

国債の金利を0.5%とすると、ドコモ社の社債は1%、住宅ローンの金利は2%というように減って、お金を借りやすく出来ますし、

国債の金利を2%とすると、ドコモ社の社債は4%、住宅ローンの金利は6%というように増え、お金を借りにくくし景気の過熱を防ぐことも可能です。

このようにして国債の金利を調整して、中央銀行は景気をコントロールしようとしています。

 

3. 金利調節は国債の引き受けにより実施

具体的な金利調節は、国債を引き受け、その分、資金(お金の一種である日銀当座預金)を民間銀行に渡すことにより行っています。*逆に金利を上げたい場合は、国債を売り払い民間銀行の資金を回収する。

例えば、99万円の国債を1年満期でもつと、100万円になって戻ってくるとします。すると、ざっくり国債の金利1%となります。この状態で中央銀行が国債の金利を1%のままにしたいとします。

お金を作れる中央銀行は、国債が市場から尽きるまで無制限に99万円で国債を買い取り、金利1%のままに保つことが可能です。

民間銀行M:「ヤバイ!!国債価格が暴落するかも!! 満期まで国債を持っていたくない~! 99万円で買った国債を90万円でもいいから売り払いたい」

日本銀行(日銀):「・・・じゃあ、99万円で買い取りますよ!!」

民間銀行M:「え?いいの?やった~♪」

  • *民間銀行Mは気が変われば、得た資金を使ってまた国債を買うことも可能です。

このようにして、日本銀行を含む中央銀行は金利調節のために、国債を引き取っています。

  • 実際には、中央銀行が99万円で国債を買い取って貰えるということが分かっているため、中央銀行が介入しなくても99万円~満期の価格である100万円の間-99万円少し上の価格域-で市場での取引が行われます。

 

最後に. 国債の引き受けは中央銀行の業務の一環

中央銀行は、国内経済の安定という職務上、結果的に国債の暴落を防ぐ役割を果たしています。

中央銀行の国債の引き取りは業務遂行の一環です。業務遂行に口出しすることは中央銀行の独立性を妨げます。

自国通貨建ての国債は最終的には中央銀行によって保証されています。

保証されている以上、財務省HPに記載の通り、
「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられません」。

 

 

更に詳しい説明⇒ 4-6.財政赤字と国債金利 その3(日銀の国債金利操作) (xbtomoki氏)

財源チラシ補足説明⇒ ○政府のお金はどこから借りているのか?

ヤンキーが金融政策を解説してくれる漫画チラシ

 

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